週刊H記者H


週刊H編集部へ

人間の運命は、どこでどう変ってしまうのものなのか……。
正直言って誰にもわからないものです。

ある種の大きな流れのなかで、ゆったりと
必然に流れているだけなのかもしれません。

この物語の主人公であるH青年も
22歳までは
俳優を志していた青年でした。

子供のころから子役をやっており、
身長184センチ体重70キロのシャープな肉体で
「松田優作のような俳優になるんだ!」

日々アルバイトしながら俳優修行をしていたのです。

あるとき、養成所の講師から
「役者はシナリオを読みこむことが大切だ」
と言われ、素直な20歳の青年は
シナリオに関する勉強をはじめておりました。

読み込むということは、書けるということ。
と、勝手な解釈をした青年Hは、

(どうせ、シナリオを書くなら、
書くアルバイトをしながらの方が
いいかもな。書くことも表現力のひとつだ)

まさに、世の中を知らないことは力、パワーです。

それまで、バーテンやパチスロの開発、
サウナ店員、肉体労働などで日々の糧を得ていた
青年Hは偶然見ていたアルバイト求人誌Aで
「記者募集」の広告を見つけてしまううのです。

勤務時間12時〜20時
土日休み
給与週5万円

貧乏な青年Hにとっては、
非常に魅力的な条件でした。

応募は履歴書と作文
「今、あなたが面白いと思う人物に関して」
を郵送で送ること。

(う〜ん、男性週刊誌って書いてあるから
小柳ルミ子について書くか)

その当時は、いい年こいた女が「私の王子様〜」と
惚気まくっていることが非常に面白く感じたのです。

まあ、その作文も後から読み返すと、誤字脱字だらけで、
理論も滅茶苦茶な原稿なのですが
奇跡的に第1次の選考に残ります。

ゴールデンウィーク前に編集部からの電話。

「経済班のMといいますが、面接に」
H青年は即日、面接へ。

生まれて初めて訪れるG国寺の街。

(あ、あれが『まんが道』に出ていた
K談社か! すげぇ!)

面接は週刊H経済班Kデスク&M編集者。
Kデスクは口ひげを蓄え、イタ物のスーツをビシっと
着こなすダンディタイプ。
横に付きそうM編集者はどういうわけか
サイズの合っていないスーツを着ていました。
(編集部に入って後でわかることですが、
急激に太ったためサイズが合わなくなっていたのです)

「君の書いてきた履歴書が最高に面白くてね。
他の人は普通なんだよね」

ここぞとばかりに、履歴書で匂わせておいた
サウナホモ事件、サウナやくざ事件、
パチスロ裏ロム事件などを面白おかしくしゃべります。

何しろ、当時は俳優修行中の青年Hですから、
かなりウケたはずです。

「あ、あの、僕は学歴がないんですけど、
なんで、面接まで残ったんでしょうか?」

「ああ、なんとなく面白そうだから」

無事、面接は終わったのですが
「なんとなく面白そうだから」という
言葉が青年Hには、引っかかっていました。

翌日、週刊H編集部から再度の電話。

「週刊HのOと申しますが、面接に」

どういうわけか、今度はグラビア班のO氏から
面接の電話が。

後で判明することですが、経済班ではキャラ的、
学歴的に難しいと判断したKデスクが
O氏に推薦してくれたのだそうです。

ここで、青年Hの人生は変ったと言ってよいでしょう。

面接に訪れると、近所のファミレスに誘うO氏。
今なら好きなものを食す青年Hですが、このときは
静かにコーヒーを注文。

O氏は履歴書の体裁を保っていない履歴書に目を通すと、
「ふ〜ん、サウナにいたんだ」
「ええ、バイトですけど」
「マッサージなんかできる?」
「ええ、仲良しのマッサージさんから習いました。
人の肩を揉めると今後、何かと役に立つって言われて」

「あと、マージャンできる?」
「はい、並べる程度ですけど」

「体格いいけど、酒なんかはどう?」
「はい、好きです」

「そう。じゃあ、明日から来てもらおうかな。平気?」
「へっ?」
「早速だけど、これから編集部に行って挨拶して、
今日はそれで帰っていいや」
「は、はい」

先輩記者である、I氏、M氏、O女史、
カメラマンのN氏、編集者H氏に挨拶を済ませると、
本当に、それで、終わり。

マッサージ、マージャン、アルコール
MMAだけで、青年Hは
記者Hになってしまったのです。

それは、バブルが崩壊したと言われつつも、
まだまだ景気の良い平成元年のことでした。


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