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第5回
『人間やめますか』は恥ずかしい
日本では裁判には時間がかかると、
よく言われます。
たしかに、民事で訴訟をおこして、
なんらかの決着をつける ためには、
費用も時間もかかるでしょう。
ところが、刑事事件の場合、
法廷で警察で自分が謳った自供を
ひっくり返さない限り、
2回程度で終わってしまいます。
検察側の冒頭陳述
(こういう悪いことをやったというあらまし)があり、
証拠品の提出、
それから被告人に対する検察、弁護士、裁判長の質問、
弁護側の証言があり(情状証人への質問)、
で、検察の求刑があり、
次回が判決です。
1回あたりの裁判時間の時間を
聞かれることがよくありますが、
そうですね1時間程度。
判決にいたっては
5分で終わります。
今書いている記事の取材に必要なのは、
検察側の冒頭陳述なので
わざわざ判決を聞きにいくことは
ないのですが、
第1回公判の前にチョコっ
と挟まれることもあります。
というか、その程度で終わってしまうのです。
その日は詐欺の傍聴をする予定でした。
裁判開始10分まえに法廷に入ろうとしていると、
地味ながら小ぎれいな洋服を着たご婦人と
娘さんらしき女性を待合室で見かけました。
キリッとした表情のなかにも、どこか不安さがあわられています。
(こんな、パリッとした人なのに詐欺の情状証人なのか)
と思ったら、その前の判決を聞きにきていたのですな。
裁判の本日予定の紙を見ると、罪状は
覚醒剤取締法違反。
法廷に入ると、すでに被告人は
警護官に挟まれて座っておりました。
その姿を見るなり、
泣き崩れるご婦人、それを支える娘。
被告人はそれはそれは立派なガタイの持ち主で
身長は180センチ以上あり。
白髪交じりの髪はさすがに拘留中でボサボサでしたが、
オールバックにすれば、それなりの迫力を感じるタイプです。
「固唾(かたず)を呑んで見守る」
という言葉がありますが、
私の前に並んで陣取っている母娘はまさにソレ。
拝むように手を前に組んで判決が
読み上げられるのを待っています。
皆さんもテレビなどで見たことがあると思いますが、
判決は淡々と読み上げられます。
「判決、被告人◆◆◆◆を懲役3年の刑に処す」
スパッと言い切ります。
被告人にとって重要なのはこの後の台詞。
「ただし」とくればその後に続く言葉は、
「その刑の執行を◆年猶予するものとする」
ときて執行猶予付き。
残念ながらこの被告人は「ただし」ではなく、
どうしてこういう刑になったのか、
の理由を言われてしまいました。
☆
このおじさん、糖尿病らしいんですね。
で、Hが弱くなっていたらしいのです。
それを覚醒剤を使うことで頑張ってたらしい。
で、私の前で小刻みに震えている奥さんとではなく、
風俗(主にホテトル)で遊ぶときに
使っていたらしいです。
相手の女性もやる気の場合は、
一緒に使っていたそうです。
で、その刺激がやめられずに常習者になっていった。
よく、覚醒剤を使うとイイ、とは聞きますが、
分別のある50代のおじさんがハマるわけですから、
そうとうなものなのでしょうな。
この男性は、警察をナメてるようなところがあって、
覚醒剤所持疑惑でガザ入れ食ってるんですね。
ところが、そのときはブツが出てこなかった。
で、調子こいて使用を続けて
結局捕まってしまうのです。
普通マークされてるコトがわかったらやめるだろうに、
よっぽと良かったのでしょうなぁ。
普通、覚醒剤の初犯だと執行猶予がつくのですが、
このお方には前科もありました。
開帳賭博と恐喝未遂。
やっぱり、
そういう筋の方だったんですね。
さすがに組の仕事でパクられたわけでもないので、
その筋らしき人は誰もいませんでしたが…。
下手をすると破門、絶縁という時代かもしれません。
わずか5分の間に、こういうことを判決文のなかで
ズラズラズラと読み上げます。
もちろん、妻も娘も聞いている前でです。
一応、判決に不服があれば上告できるようにはなっていますが、
多分素直に刑を受けるのでしょう。
判決が終わり再び手錠腰繩で連行されていく被告人。
その姿を見ながら何かいいたげな奥様。
でも、法廷内は私語禁止。
ただ、じっと見つめるだけで、
目と目で会話して出ていきました。
というわけで、この裁判から得た教訓は、
糖尿病には気をつけよう。
ということですな。
えっ、違う?
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